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【2026年1月施行】下請法が約20年ぶりに大改正

お知らせ

2025.12.24

「中小受託取引適正化法(取適法)」で何が変わるのか?

2026年1月、**下請代金支払遅延等防止法(下請法)**は、
「中小受託取引適正化法(取適法)」へと名称を変更し、大幅改正のうえ施行されます。

今回の改正は、単なる法律の見直しではありません。
**サプライチェーン全体での価格転嫁を本気で進めるための“構造改革”**であり、
多くの中小企業にとって、取引環境・資金繰り・経理実務に直接影響する重要な改正です。

本記事では、改正の背景と2026年1月からの主な変更点を整理し、
企業が今から準備すべきポイントを解説します。


1. なぜ今、下請法が改正されるのか【背景】

近年、企業経営を取り巻く環境は大きく変化しています。

  • 労務費の上昇(最低賃金引上げ・人手不足)

  • 原材料費・エネルギー価格の高騰

  • 物流コストの上昇

  • デジタル化の遅れによる業務効率化の限界

政府が掲げる「物価上昇を上回る賃上げ」を実現するには、
中小企業が賃上げの原資を安定的に確保できる取引構造が不可欠です。

しかし現実には、

  • 協議が行われないままの価格据え置き

  • 一方的な単価決定

  • 支払条件の悪化(手形・実質的な支払遅延)

といった商慣習が、価格転嫁を阻害し、中小企業の収益を圧迫してきました。

こうした不公正な取引慣行を是正し、
「交渉できる」「転嫁できる」取引環境を制度面から整備するため、
今回の大改正が実施されます。

▶ 参考(中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2025/251014_01.pdf


2. 2026年1月からの主な改正ポイント【実務に直結】

① 運送委託が新たに対象取引へ(物流問題への対応)

これまで対象外だった、
発荷主が運送事業者へ物品の運送を委託する取引が新たに法の対象に加わります。

物流コストの上昇が社会問題化する中で、
運送業者への一方的な条件押し付けを防止する狙いがあります。

▶ 製造業・卸売業・小売業など、物流を外注している企業は要注意です。


② 規模要件に「従業員数基準」を追加(下請法逃れ対策)

従来は資本金基準のみだった親事業者の規模要件に、
従業員数基準が新設されます。

取引区分 新たな基準
製造委託・修理委託等 従業員数300人超
役務提供委託等 従業員数100人超

これにより、
資本金を抑えて下請法の適用を回避する行為への対策が強化されます。


③ 手形払い等が原則禁止(=支払遅延に該当)

本法の対象取引では、手形による支払いが原則禁止となります。

また、以下の支払方法も注意が必要です。

  • 電子記録債権

  • ファクタリング等

👉 支払期日までに、代金満額相当の現金を確保できない手段は「支払遅延」に該当します。

これは、中小企業の資金繰り改善・キャッシュフロー安定化に直結する重要な改正です。
経理・支払フローの見直しは必須となります。


④ 協議に応じない一方的な代金決定の禁止(価格据え置き対策)

コスト上昇局面で問題となっている「価格据え置き取引」について、
次の行為が明確に禁止されます。

  • 代金に関する協議に適切に応じない

  • 必要な説明や情報提供を行わない

  • その結果、一方的に代金を決定する

これにより、
形式だけでなく“実質的な価格交渉の場”を確保することが求められます。


⑤ 法執行体制の強化(実効性アップ)

  • 公正取引委員会に加え

  • 事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言権限を付与

さらに、省庁間での情報共有規定も新設され、
サプライチェーン全体での監視・執行体制が強化されます。

「形だけの対応」では済まされない環境になります。


3. 企業実務への影響【DX・経理・業務効率化の視点】

今回の改正は、法対応=コンプライアンスにとどまりません。

  • 支払条件の見直し

  • 契約書・取引条件の整理

  • 価格交渉の記録管理

  • キャッシュフロー管理の高度化

これらを確実に行うには、
DX・デジタル活用による経理・取引管理の効率化が不可欠です。

たとえば、

  • クラウド会計による支払管理の可視化

  • 電子契約・請求書データの一元管理

  • 取引条件・交渉履歴のデジタル保存

といった対応が、法令対応と業務効率化を同時に実現します。


4. まとめ ― 取適法は「価格転嫁時代」への本格シフト

下請法から「中小受託取引適正化法(取適法)」への改正は、
中小企業が適正な利益を確保し、持続的に賃上げできる環境を整えるための大転換です。

2026年1月の施行に向けて、

  • 自社の取引条件は適正か

  • 支払方法・契約形態は問題ないか

  • 経理・業務フローは法改正に対応できているか

を今のうちから確認し、
コンプライアンスと業務効率化を両立する体制構築が求められます。


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