【2026年5月施行】「事業性融資の推進法」で変わる資金調達の常識 ― DX時代の企業価値評価とは?
お知らせ
2025.11.19
**2024年6月7日に成立した「事業性融資の推進等に関する法律」**が、2026年5月25日に施行されます。
不動産担保や経営者保証に依存してきた日本の融資文化が、企業の「事業そのもの」を評価する新しい時代へ。
本記事では、制度の概要とともに、企業がこの変化にどう備えるべきかを整理します。
1. 事業性融資の推進法とは ― 日本の融資を変える新制度
「事業性融資の推進等に関する法律」は、金融機関が企業の事業内容や成長可能性を評価して融資判断を行うことを制度的に後押しするものです。
中核をなすのが「企業価値担保権」の創設です。
これは、不動産などの有形資産ではなく、企業の技術・ブランド・顧客基盤・人材など、事業価値全体(無形資産を含む)を担保とみなす新しい仕組みです。
つまり、これまで資金調達が難しかった企業――たとえば
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無形資産型ビジネス(SaaS、ブランドビジネスなど)
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スタートアップ・中堅企業
でも、「事業そのものの信用」で融資を受けられる環境が整いつつあります。
2. 「事業性評価」とは何か ― 数字に現れない“将来性”の可視化
事業性評価とは、財務データだけでなく、事業の内容・競争優位・経営者の資質など、企業の将来性を見極める評価手法です。
従来の融資審査との違い
| 観点 | 従来型融資 | 事業性評価型融資 |
|---|---|---|
| 審査基準 | 担保・保証・過去実績中心 | 事業の将来性・経営戦略・無形資産 |
| 情報源 | 決算書・担保評価 | 現場ヒアリング・事業計画・顧客動向 |
| 金融機関の役割 | 貸付と回収 | 経営支援と伴走 |
この仕組みを支えるのが、デジタル化・DXによる経営情報の透明化です。
経理データや販売・在庫データをリアルタイムで可視化することで、
金融機関が「企業の動き」を継続的に把握し、事業性評価の精度を高められるようになります。
3. 金融機関が見る「4つの評価軸」
金融庁が掲げる方針では、今後の融資審査で次の4項目が特に重視されます。
① 事業モデル・競争優位性
市場でのポジション、他社との差別化、収益の再現性。
DXやデジタル技術を活用して効率化・データ経営を行う企業は高評価に。
② 経営戦略と実行力
単なるビジョンではなく、数字と行動に裏付けられた中期計画が重要。
クラウド会計などで計画と実績のモニタリング体制を構築している企業が有利です。
③ 経営者の資質・リーダーシップ
リスク対応力や従業員との一体感、継続的な改善意欲が評価対象。
金融機関は「人を見る融資」へとシフトしています。
④ 無形資産・組織の強さ
技術、人材、顧客、ブランドといった見えない資産も重要。
社内の情報共有やデジタル基盤整備も「無形の経営力」として評価されます。
4. 融資を受けるための実務ステップ
制度施行後にスムーズに融資を受けるためには、**“自社の価値を伝える準備”**が欠かせません。
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事業計画の策定
強み・市場機会・将来の収益性を整理。数字だけでなく「戦略ストーリー」を明確に。 -
金融機関との早期対話
担当者に定期的に情報提供し、「動いている会社」であることを見せる。 -
DXによる可視化
クラウド会計・販売管理・経理の自動化などを進め、
「データで語れる経営」を実現。 -
事業性評価ヒアリング
金融機関の質問に対して、現場の実態と将来計画を一貫して説明できることが重要。
5. 経営者が今すぐ着手すべきこと
この制度は、単なる“融資枠の拡大”ではなく、
「経営の見える化」「データ経営」「財務DX」への移行を促す国家的施策です。
したがって、今のうちから以下を進めることが有効です。
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DX・デジタル化による会計・経理のリアルタイム化
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顧客・在庫・受発注などの業務効率化
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無形資産(ブランド、人材、技術)の棚卸と見える化
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事業計画書・経営戦略資料のデジタル整備
これらの取り組みが、融資だけでなく補助金申請・M&A・資金調達全般の信頼性向上にも直結します。
6. まとめ ― 金融DXの時代、「経営情報を価値に変える力」を
「事業性融資の推進法」は、
企業と金融機関の関係を“審査”から“共創”へ変える法改正です。
経営者に求められるのは、
📊 自社の価値を可視化するデジタル経営力
🤝 金融機関と継続的に対話できる発信力
💡 数値とストーリーを両立させる経営計画力
DXと経理の見える化を通じて、「事業性評価に強い企業」への進化を図りましょう。
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税理士法人エヌズ 財務支援部では、
事業計画策定・融資対話資料作成・DXによる経理業務効率化支援を行っています。
金融機関との「事業性評価対応」を含めた総合的な経営支援が可能です。
